「昔は半日で70、80`揚がったが、いまは5`がやっと。年寄りの暇つぶしやなぁ」。 瀬田川河口でセタシジミ漁を続ける瀬田町漁協組合長の岡田 甚一郎さんはしみじみと語る。
昭和30年代、6,000dあった水揚げは、高度経済成長とともに減り始め、いまは200d前後で低迷を続ける。 特に南湖での激減が目立ち、瀬田川河口では全く獲れない時期もあった。
「琵琶湖の汚れがみんな瀬田川に集まってくる。シジミの好むきれいな砂地がヘドロに埋まったから減るのは当たり前。 それに 浚渫工事で6bのタマ(シジミ漁用の網)が使えないほど川底が深くなった。光が届かないところではシジミは育たん」と岡田さん。
セタシジミは琵琶湖固有種。同じ淡水にすむマシジミに比べ殻頂部が大きく盛り上がる。幼貝は美しい黄緑色で、褐色の親貝になっても格調高い光沢がある。 味も良く「何とも言えぬ出汁がでるので、東京の築地では他のシジミに混ぜて売るだけで高値がつく」と県漁連は胸を張る。
県水産試験場は昭和63年から本格的なセタシジミ復活作戦に取り組んでいる。すでに人工ふ化技術は確立。昨年はふ化したばかりの子貝2億5千万個を試験漁場に放流した。 シジミが繁殖するには一定の密度が必要で、親貝になる3年前、縄文時代中期前半(4500年前)の大規模な貝塚が見つかり話題になった。 これまでの選別作業によると、貝殻の9割はセタシジミ。いまではみられない4a近い大型が多数混じっている、という。セタシジミを貝塚でしか語れない時代だけは願い下げにしたい。 (93.9.18 京都新聞から)
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